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ダイヤモンド愉快な仲間達
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2004年 09月 09日
2004年 07月 22日
※この話は、HOTEL1・HOTEL2・HOTEL3・HOTEL4の続きです。
そちらを御覧でない方はHOTEL1 HOTEL2 HOTEL3 HOTEL4をお先にどうぞ。 やっとの事でエレベーターがフロント階に着くなり、 さっきとはまるで逆に、 エレベーターから吐き出される様に、隙間から外へ体が噴き出した。 その勢いのままフロントへと、 夜勤の人の名前を叫びながら駆け出そうとした矢先、 丁度フロントではお客様がチェック・インをしていた。 「こんな時になんだよ!もう!」 と、いわれの無い苛立ちを舌打ちに変え、お客様にチッとぶつけた。 こんな極限状況では、やはり主観が優先する。 なんとなくばつの悪さを感じ、 フロントに近寄れず、エレベーター前に留まっていた。 チェック・インを済ませたお客様をやり過ごし、 エレベーターが閉まるのを確認して、改めてフロントへ駆け出した。 「マジマジマジマジマジマジマジマジマジマジマジマジマジマジマジ!!!!!」 「マジぃ!?」 「マ ジ!!」 「マジかぁ・・・」 夜勤の人は、面倒な頼まれ事をされた様な顔をして、溜め息混じりに奥歯を噛んだ。 興奮しきって一部始終を、 「ハァハァ」と、普段より明らかに大きな声で説明する自分に、 「そうかぁ・・・そうかぁ・・・」と事務的なあいづちを、ウツムキ加減に返すだけだった。 ひとしきり喋りきったところで、とりあえず10階に電話しようという事になった。 10階にはホテルの経営者である、社長一家が住んでいるからだ。 その後、警察にも連絡したが、自分がかけたのか誰がかけたのかは憶えていない。 記憶力には自信がある方なのだが、憶えていない。 なんとなく自分がかけた気がするのだが、自信が持てない。 それ程一杯一杯だったのだろう。 「タバコ吸ってきていいスか?」 夜勤の人にことわりを入れて、タバコを吸いにフロントの奥の影へ移った。 「タバコには、心を落ち着かせる効果がある」―という頭がある。 一コ上のバイトはタバコを吸わない。 一人、タバコをくわえると、タバコがふるふる震えていた。 火をつけ、意識的に深く吸い込んみ、ゆっくりといとおしむ様に吐き出す。 タバコの効果は、吐き出す時にその味噌がある。 その時のタバコの味が、ウマいのマズいのとは憶えていない。 ただ、燃えている火種の部分が、いつもより長かったのを憶えている。 喫煙者には分かると思うが、 すぱすぱと引っ切り無しに吸うと、火種が長くなるのだ。 こんな所からも見て取れるように、やはり焦っていたのだろう。 「平常心。早く平常心に」と、タバコを吸うのだろうが、火種は長くなる一方だ。 ![]() ※HOTEL6へ続きます 2004年 07月 21日
※この話は、HOTEL1・HOTEL2・HOTEL3の続きです。
そちらを御覧でない方はHOTEL1 HOTEL2 HOTEL3をお先にどうぞ。 ![]() ドアノブを離すと同時に、反射的に口を突く割れた声。 一瞬、ホテル特有の四角い静寂さは崩れた。 自分の声に興奮している一コ上から、「シーッ!静かに!」といさめられ、 崩れた静寂さを元のとおりにしようと努めたが、 一度バラバラに崩れたブロックは、歪にしか積み上がらない。 反射的に出る声を抑えようと、声を息づかいに変えるが難しい。 ドアは自動的に閉まるタイプの為、既に静かに閉まっていたが、 鍵はまだ鍵穴に刺さったまま、静かにぶら下がり揺れている。 無意識のうちに809号室の前から、5m程後退っていた。 ぶら下がっている鍵を抜こうと、ドアの前へと赴いたが、 どうしてなかなか鍵に触れるのが躊躇われる。 体の中程から込み上げてくる怯えの感情が、指先や膝頭に震えとなって現れ出す。 震える手で危険物を取り扱うようにして、なんとか鍵を引き抜くと、 エレベーター前へと一目散に駆け出していた。 エレベーター前までの8階フロアの廊下には、 数秒前まで在った筈の「架空のレール」など、今や跡すら微塵も存在していないのだ。 エレベーターを呼び出す▼のボタンを押し、 一コ上と息づかいの声で、 「よりによって何で自分がバイトの日に、こんな事が起こるんだ」 といった様な事を、ハァハァと目茶苦茶に喋り続けた。 こんな状態で待つエレベーターは、やはり遅い。 ボタンを無意味に連打しなかったのが、不思議なくらいだ。 やっとの事で到着したエレベーターの扉が開き始めると、 その隙間へ、 真空状態が解除された為に発生した、「陰圧」に吸引されるかの様に滑り込んだ。 ロビー行きのボタンを競い合うように押した。 「早くこのフロアから離れたい」 その一心から来る行為だ。 こんな時、エレベーターの運行速度は、やはり遅い。 ![]() ロビーへと向かうエレベーターの中、 手足の震えは、大きく全身へと行き渡っていた。 実感が湧いてきてるという事か。 そんな両手を凝視していると、前歯がカタカタと俊敏に鈍い音を立ててきていた。 否応無しに809号室の光景が浮かんでくる。 死体は真横を向いてぶら下っていたので、 側頭部から頬の辺りまでで、顔を正面から見ずに済んだ。 また部屋の明かりのお陰で、軽く逆光になっていたのも救いだった。 しかし、かなりの至近距離で目の当りにしたことは事実だ。現に今でも、 深緑色のポロシャツ その裾を差し込んだ薄い紺色のズボン それを留めた茶色い光沢感のある革のベルト だらりとした足先 軽く天然パーマの気が見て取れる揉上げの形 と、断片的ではあるが鮮明に憶えている具合なのだ。 ※HOTEL5へ続きます 2004年 07月 19日
※この話は、HOTEL1 HOTEL2の続きです。
そちらを御覧でない方はHOTEL1 HOTEL2をお先にどうぞ。 ![]() マストいっぱいに風を抱いた帆船は悠々と進む。 追い風をうけた体は、依然速度を保ちながらも面舵をとる。 ドアノブを、それは固く握りしめていた両手を緩め、スゥーと中へと押し開けた。 さっきまでのドアとは別物の様だ。 小さな頃よく行った廃車置き場。 長い間雨風に吹きさらされた乗用車の運転席のドアの様に重く固かったのに対し、 今では整備士の手により、丹念に油が射されているようで、柔軟でいて、しなやかだ。 ドアに対して、女性もしくは母性を感じると言えば言い過ぎだが、そうなのだ。 ユニットバスの出っ張りの向うにベッドがある。 出っ張りの陰にある故に、ドアの隙間からは詳しく確認出来ないのであるが、 ベッドの上に掛け布団が横たわっているのが見えた。 そこにある膨らみには、何かが宿っている様に自分には思えた。 それにより、更に追い風を抱いたマストは根限りに張り詰めたのだ。 背後から「どう?どうなってんの?」と、無言の息づかいで尋ねてくる一コ上。 すっかり安心しきった自分は、今まで頑なに守ってきていた、 毎秒数cmのドアを押すスピードを冒し、ぐいっと勢いよく片手で開けた。 客室の電気は灯っている。 だのに目の前には明かりを遮る影があり、暗い。 予想外の場所・距離にある影は、自分の視界からはみ出している。 反射的にその影の全容を捕らえようと、眼球がククッと上下に運動した。 「足?」 影が闇へと拡がった。 足が床から30cmほど離れている。 人間 首吊り自殺 死体 今思うとそれは、 吊られているというより、あまりにも真っ直ぐで、 微動だせず、宙に浮いているようだった。 ※HOTEL4へ続きます 2004年 07月 17日
※この話は、HOTEL1の続きです。 まだの方はHOTEL1をお先にどうぞ。
![]() 一コ上のバイトは国立大学に通う、自分と同時期に今の職場に入ったひとだ。 8階へ向かうエレベーターの中は、普段より昂揚した声で、 「マジだったらどうするよ?」 「『スタンド・バイ・ミー』みたいだよなぁ!」 「やべーよ!伝説ネタが増えるかも!」 終始喋り続けていた気がする。 不安は、エレベーターの上昇するスピードよりも速く高まっていった。 いまや8割を越えている。エレベーターの扉が開くと、当たり前だが8階だ。 しかしその扉は、―「ヘブンズ・ドアー」 と呼ぶに相応しい代物に、二人の心理から言えば成り変わっていた。 扉が開くと何もない廊下を、「スタンド・バイ・ミー」の線路の上を歩くシーンの要領で、 よろめきながら歩く真似をしつつ、809号室の前まで足を進めた。 こんなくだらない行動が、その時自分で出来る精一杯だった。 マスターキーは自分が持っている。 つまり自分が部屋のドアを開ける訳だ。 ドアをノックして 「失礼いたします。フロントでございます。」 ―返事は無い。 「ドンドンッ!失礼いたします。フロントでございます。」 ―やはり返事は無い。 「恐れ入りますが、お部屋の鍵をお開けいたします。」 もはやこんな言葉は、ただの形式上のものに過ぎなかった。 鍵を鍵穴に差し込み、心なしか静かに回した。 辺りの酸素濃度が狂っていると感じる程、胸がつまった。 こんなに何かに怯えた憶えは未だかつてなかった。 鍵を開けた。 「カチャ」という乾いた音が、 8階フロアの手狭な廊下に、必要以上の音量で響いたことを良く憶えている。 客室のドアは中へ押し開けるタイプだ。そのドアに隠れる様にして、 中へとそれはゆっくりと両手でドアノブを握りしめ、開け始めた。 マスターキーは鍵穴に差したままだ。 指2本分程開いたところで、客室の電気が灯いているのがわかった。 ドアはあくまでゆっくりとだ。 客室に入ってすぐ左手がユニットバスだ。 一般的な学生ワンルームを想像してほしい。 ユニットバスの前に敷いてある足拭きマットが見えた。 足を拭いたとみえる形跡が、くしゃっと残っていた。 それが目に滑り込んでくるなり、 全身にタールを塗られた様だった重い息苦しさから、フッと解放されたのがわかった。 すべては、明かりの灯っている部屋、 入浴したと思われる足拭きマットの形跡、 なにより30cmばかり押し開けたドアの隙間から漏れてくる 人肌で温められた空気が物語っていた。 ―「中に人が居るのでは?」 己の生命を維持するために、空気中から酸素を抽出し、 不要になった二酸化炭素を再び空気中へ送り出している、 「生きている人間がいるのでは?」 ドアの隙間から漏れ出ている客室の灯りは、希望のスリットへと変わった。 ※HOTEL3へ続きます 2004年 07月 15日
![]() 自分は現在、あるビジネスホテルのフロントで働いている。 勤めだしてからもうじき半年になる。18時からの勤務だ。 身なりを整えフロントに入ると、まずは業務の引き継ぎをする。 大抵は、何号室がキャンセルになった。 何号室が料金未納のままだ等の、 ミスを未然に防ぐ為の引き継ぎが主立った内容だ。 だがその日はそれに、 「809号室のお客様が、まだチェックアウトされていません」 ということが付け加えられていたのだ。 うちのホテルのチェックアウト時間は、正午12時だ。 他のホテルに比べると、若干遅い設定になる。 通常ならば正午の時点で、まだアウトしていない客室に内線をつなぎ、 時間が過ぎていることを伝えて、 チェックアウトを促すか、もう1日延泊するかを尋ねるのだが、 その日はいくら内線をかけても、受話器が上がらないというのだ。 一度や二度なら、まだ寝ているのかとも思えるのだが・・・。 試しに自分も内線をつなごうとしたが、 何度かけても、虚しくコール音が返ってくるだけだった。 うちのホテルは外出する際に、客室の鍵をフロントで預かるようになっている。 チェックアウトの際はもちろんだ。 預かった鍵は、「キー・ボックス」という物に入れておく。 フロント・カウンターの裏側にあり、棚が碁盤状に客室の数だけ仕切られていて、 さながら「カプセルホテル」のような、ボックスというより棚があるのだ。 これはなにかと便利で、一目見れば、 何号室がアウトしているか?何号室が空室か? 何号室が料金を貰っているかまでがわかる。 その日、809号室のボックスに鍵は入っていなかった。 引き継ぎをした昼間勤務していた人の話によれば、 部屋の鍵はかかっているのだそうだ。 つまり、809号室の中にまだ鍵があり、お客様が中から鍵をかけたか、 フロントに鍵を預けるのを忘れて、 鍵を持ったまま帰ってしまったかの、どちらかになる。 その後、何度か内線をつなごうと試みたが結果は同じだった。 やがて気にも止まらなくなった22時に、夜勤の人が出勤してきた。 挨拶代わりにしばらく喋っていた。 そして思い出した様に夜勤への引き継ぎをした。 その最後に「809」の話をした。 夜勤の人は、自分が思っていたよりも苦い顔をした。 薄々感づいてはいたが、この顔を見た途端、 自分の中の不安は5割を裕に越えてしまった。 その不安を押さえ込む様に、勉めて明るく 「ちょっくら、部屋見て来ますわ」 と言い放ち、マスター・キーを手にしたが、 やはり不安は目減りせず、一コ上のバイトを誘いエレベーターへと向かった。 ※HOTEL2へ続きます 2004年 07月 14日
今日もバイトです。
私の仕事は、ビジネスホテルのフロントなのですが、 やはり、ホテルという場所には、ドラマが溢れております。 以前、携帯のHPで、ホテルで起こった出来事を書いていたのですが、 最近、あまりに何も無いので、こっちに移植しようと思います。 身内の人間には、あまりにも有名な話なのですが、 まだ知らないという方は、読んでみてください。 如何せん、長いですけどね。 それでは、乞うご期待です。※HOTEL1へ < 前のページ次のページ >
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